2008年3月22日

日本食の人気はどこまで続く?


世界的に活躍するシェフ、松久信幸氏の新しいレストランNobu Los Angeles(ノブ・ロサンゼルス)が3月4日にオープンした。昨年、ビバリーヒルズの一等地に巻き起こる日本食旋風について書いたが、最新のノブはその流れをさらに先へと動かす存在だ。

有名レストランが軒を連ねるラシエネガ通りの北端に立地するノブは、ロサンゼルスで最高峰といわれたフランス料理店オランジェリーの土地と建物を引き継いでオープンした。このロケーションは、松久氏が1987年から経営するマツヒサから数ブロック、車で5分ほどの距離にある。

ビバリーヒルズの一等地で日本料理店がフランス料理店に取って代わる・・・ノブのオープンは天井知らずの人気を甘んじる日本食と、斜陽ともいえるフランス料理の現状を象徴しているかのようだ。紫色の外観に赤が基調の内装という斬新なデザインのノブは、ヒップホップ音楽がかかる賑やかな空間で、客層も若いグループが中心。ベルサイユ宮殿を彷彿させたオランジェリーの面影はない。

アメリカの日本食は今、トレンドと切り離せない存在になっている。ヒップでトレンディな空間で日本食を提供すると、驚くほど利益が上がるのだ。それはSushi Roku(すし六)、Katana(カタナ)、Geisha House(ゲイシャ・ハウス)、Koi(コイ)といった日本食レストランで実証済みである。セレブリティも常連のこういった大資本レストランはみな、アメリカ人が経営している。世界中に出店するノブも、松久氏の単独経営ではなく、俳優のロバート・デニーロおよび2人のアメリカ人ビジネスマンが共同経営者として名を連ねることは有名だ。日本食の人気や発展は今後ますますアメリカ人の手に委ねられていくのかもしれない。

写真はノブ・ロサンゼルスのバーエリア。

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2008年1月28日

サブプライムローン問題 その4


前回、サブプライムが信用度の低い借り手にも、勝ち組になるチャンスを与えるローンとして登場したことを書いた。常識的に、支払い能力があるかどうかわからない相手には、高金利を設定したり、厳しい条件を課したりするのが大前提だ。しかし、好調な不動産市場を背景に、金融機関が金をばら撒き始めたことから、誰もが勝ち組になれる錯覚に陥っていった。

そうなると、社会人になりたてだろうが、借金を抱えていようが、みなバスに乗り遅れるなとばかりに不動産を求め始める。自分が住むためではなく、投資目的で買っては売り、買っては売りを繰り返すフリッパー(flipper)も増加し、いくら新築住宅を建ててもすぐに買い手がついた。人の感覚が急変するのは意外と簡単で、一度こういった狂騒が始まると誰もが浮かれ始めるのは、どの国でも似たり寄ったりだ。

もとは都市部の住宅不足から始まった不動産価格の上昇が、サブプライムローンの常軌を逸した拡大によって地域の手を離れ、株式市場に流れてしまった時点で、バブルに突入することは避けられなかった。そして、アメリカに限らず各国の銀行や証券会社がサブプライムローン会社に巨額を投資し、銀行自身も住宅ローン部門でサブプライムの枠を広げ、市場が返済可能かどうかもわからない利子に頼って動きだし、結果、この狂騒が世界に飛び火することになった。

世界経済に大きな影響を与えているだけに、サブプライムの話題が連日のように報じられて、多くの専門家がいろいろな解説をつけているが、実はこの問題は「返せない人に金を貸した」というだけの、実に単純でわかりやすい問題なのである。ないお金をあるかのように装って、貸し手、借り手、投資家、不動産屋が揃って浮かれていたのだ。そのツケがまわって来ないほうがおかしい。今回のサブプライム問題は、小学3年生でもわかるそんな当たり前のことを、わざわざ学習するために巨額な授業料を支払い、世界経済を混乱に落とし入れ、多くの人の生活を犠牲にしている。

(完)

写真は全米各地で急増している"Foreclosure"(差し押さえ物件)のサイン。

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2007年11月15日

サブプライムローン問題 その3


少し間があいてしまったが、サブプライムローンの問題について続ける。

「不動産で勝ち組になる」ことがアメリカ人の人生設計で大きな比重を占めているわけだが、誰もがそんなに簡単に住宅ローンを組めるわけではない。

アメリカの大学生の大半は卒業時に多額の借金を背負っている。大学の学費は一般家庭が支払えないほど高騰し、多くの学生は親の援助がある、ないにかかわらず、 学費ローンや奨学金に頼りながら高等教育を受けるのが一般的だ。社会人になってから数年間、人によっては10年以上も学費を返済していかなければならない

特に若い人はクレジットカードやローンの返済履歴に乏しい。アメリカでは、どこの企業に勤続何年といった内容は審査基準としてそれほど重要ではなく、これまでにいくらの額を借金して、その返済をきちんと行ったかどうかが、その人の信用度を決める。


消費をカードやローンに頼るアメリカでは、借金が膨れ上がって払いきれなくなる人も多い。支払いの延滞や自己破産といった話は日常的で、カードを何枚も使いまわしてなんとかしのいでいる人も珍しくない。

こういった「信用度の低い借り手」、つまり、これまでなら住宅ローンの対象にならなかった人たちに、勝ち組になる夢を与えるべく登場したのが、サブプライムローンだ。

(続く)

写真はサブプライム大手のニューセンチュリー本社(カリフォルニア州アーバイン)。2007年4月に破産申請し、従業員の大半を解雇。すでに社名が入ったサインはビルから外されている。

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2007年9月30日

サブプライムローン問題 その2


前回のエントリーで、住宅の購入が「一生に一度の大きな買物」ではないことを書いた。ライフステージに合わせて家を住み替えるアメリカ人にとって、不動産は投資なのである。


たとえば、結婚してコンドミニアムを買ったとする。その数年後に子供ができて一軒家に住み替えようと思った時、コンドミニアムの資産価値が上昇していれば、 売却価格を資金にすることができる。資産価値が大きくあがっていれば、自分の年収の相場より1ランクも2ランクも上の住宅を購入することができるのだ。

子供が増えてその家が手狭になった時、不動産価値があがっていればさらに大きな家に移り住むことができる。子供が独立したらその家 を売却または貸し出して、夫婦2人で小さなところに移る。こうして不動産からのアガリをうまく運用して、老後の豊かな生活に備えようとする願望が、特にベ ビーブーマー以降の世代では強い。

これは飽くまでも理想で、現実は勝ち組でい続けることは難しい。初めての住宅購入の時期を誤ると、資産価値の損失が痛手となって尾を引くし、一度買ってしまった住宅から引っ越せなくなることもある。また、容赦ない企業のレイオフや離婚といったアメリカの厳 しい現実も、理想を脱線する原因をつくる。

しかしながら、「不動産はあがるもの」と信じ込み、誰もが勝ち組になろうと飛びついた結果、サブプライムローンの問題が起こってしまったのである。

(続く)

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2007年9月14日

サブプライムローン問題 その1


アメリカのサブプライムローンの問題が、日本でも連日のように取り上げられている。しかし、そのほとんどがマクロ経済や株式市場の視点で語られ、消費者レベルの具体的な話はあまり出てこない。


この問題を考えるとき、まず知っておきたいのがアメリカの住宅市場の特色だ。アメリカ人は住宅の購入を「一生に一度の大きな買物」とは考えていない。もちろん、一度だけ住宅を購入してそこに死ぬまで住み続ける人もいるが、多くは自分のライフステージにあわせて住居を変えるのである。

たとえば、結婚したら2LDKほどのコンドミニアムを買い、子供ができたらそこを売って郊外の一軒家に移る、子供が独立したら便利な都心に引っ越したり、田舎でのんびり暮らしたり・・・という具合だ。

今回の不動産バブルとサブプライムローン問題は、こういった文化があるからこそ、起こったといえる。 (続く)

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